夢よさめないで……

 最初に好きになったのは西谷祥子さんや花村えい子さん・大和和紀さんで
 小さいときから映画スターや周りの男性に憧れるよりは、漫画家の描く男性達に胸をときめかせることが多かった私です。
 現在でも、生身の人間よりも架空世界の住人に恋することのほうが多く、時として現実と空想が渾沌としてしまいます。
  それは具体的にどういうことなのかというと、たとえば名簿や印刷物の中に見つけた素敵な名前を見つけたとします。そんなときにはその名前の持ち主を想像したりするのです。この名前の人はこういう人であって欲しいとイメージを膨らませてゆく順番は身長、体形、とすすみ一番最後に顔の部分を思い浮かべるのです。ここいらあたりまでは現実の人間のパーツを組み合わせて考えているのですが、完成が近づく頃には好きな漫画家の絵柄に置き換えてしまっているのです。
 たいていの場合これはとても楽しい作業です。
 けれど時にはこれが私に大きなダメージを加えることもあるのです。
 全く関係のないところで想像を膨らませているだけならいいのですが、よせばいいのに自分に関係しそうなところでもそれをやってしまうのです……おわかりいただけますよね、学校の名簿だとかそんなものから拾い出した素敵な名前の持ち主とは対面する可能性があるのです。イメージの世界で美しく完成されているキャラクターとはまったくの別の、時として顔を背けたくなるような人物がへらへらと笑っている時には、本当に目まいに襲われます。
 それでもささやかな楽しみが止められない私は胸の中で呟くのです「夢よさめないで」と。



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